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episode 5

世界中の氷河や氷床が溶けている。

2019年の夏、スイスの氷河で夏の2週間の間に8億トンの雪と氷が消えてしまいました。温暖化によって、スイスをはじめアルプスの氷河がどんどん消えています。このままだと30年後には1500カ所のアルプスの氷河はすべて消えてしまうかもしれません。一年中氷に覆われているグリーンランドが夏に氷が溶けはじめていることも、日本の気象衛星によってわかりました。

そして、北極も温暖化の影響を大きく受けています。北極の平均気温は他に比べて2倍もの速さで毎年上がっています。北極は、南極のように大陸がなく、大部分は海に浮かぶ氷が占めています。南極の氷が厚さ数千メートルあるのに対して北極の海氷の厚さは数メートルです。北極の平均気温が上がり、海氷は溶けて縮小し続けています。その面積は、この30年間で100万㎢。このままだと、2050年には50%以上減るといわれています。
この影響を最も受ける動物はホッキョクグマです。彼らは氷が溶ける夏の間、何も食べずに過ごす習性があります。温暖化で氷が溶け、その期間が長くなるほど体が弱り、繁殖できなくなります。ホッキョクグマの餌となるアザラシも温暖化によって雪の中の巣が壊れ、子育てができなくなります。

北極の温暖化は、地球全体にも影響があります。海氷はもともと海の水が凍ったものなので、溶けても海面が上昇することはありません。でも、グリーランドやアラスカなど北極圏の陸地の氷や雪が溶けて海に流れ込むと海面が上昇します。これは地球全体に影響があります。永久凍土が溶けて、メタンガスが出てくることも大きな問題です。メタンガスは二酸化炭素と並んで温暖化の原因となる温室効果ガスです。しかも、その温室効果は二酸化炭素の約21倍と強力です。地中に閉じ込められていたメタンガスが、温暖化によって湧き出しさらに温暖化に拍車をかけるという現象が、北極圏であらわれているのです。


episode 5
世界中の氷河や氷床が溶けている。



くわしいデータと解説1
グリーンランドの氷床融解。


グリーンランドは、北大西洋と北極海の間にある大きな島で、その大部分が北極圏内にあり、島のほとんどは、一年中氷で覆われています。
2012年に打ち上げられたJAXAの水循環変動観測衛星「しずく」は、働き始めてまもない7月12日に、グリーンランド氷床表面がほぼ全域にわたって湿った状態になっていることを見つけました。つまり、融解(氷が溶けている)していることがわかったのです。グリーンランドは、夏でも表面がカチカチに凍っているのが通常です。JAXAはそれ以前から他の機材でも観測してきましたが、このような現象はこれまでには見られませんでした。温暖化の影響が北極圏に及んでいる証拠です。


提供:JAXA(国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構)


くわしいデータと解説2
北半球の海氷は、どんどん減っていく。


出典)全国地球温暖化防止活動推進センターウェブサイト( https://www.jccca.org )より

上のグラフは、これから先、北半球の海の氷がどうなっていくかを示したものです。青と赤の二つの予測があります。青は将来の気温上昇を2℃以下に抑える最も温暖化対策をとった場合、赤は温暖化対策を取らないで最も温暖化が進んだ場合です。
青の、最も温暖化を抑えた場合でも、21世紀末には海氷の面積が現在より43%減少すると予測されています 。 一方、赤の、最も温暖化が進んだ場合には、21世紀の半ばまでには北極域の海氷はほぼなくなる可能性が高いと指摘しています。

下は、21世紀末の北極海を描いた予想図です。赤の場合の予想図が上の図で、海氷は見当たりません。青の場合の予想図(下の図)でも、海氷は現在より一回り小さくなることが予測されています。


出典)全国地球温暖化防止活動推進センターウェブサイト( https://www.jccca.org/ )より