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episode 4

海が酸性化し、生き物が住みにくくなる。

地球の温暖化をもたらす温室効果ガスの中で、いちばん多いのは二酸化炭素です。この二酸化炭素が大気中に増えると、それを吸収してくれるのが海です。前回、地球の気温が上がるとその熱を海が吸収してくれるというお話をしましたが、この二酸化炭素を海が吸収してくれるという点でも、海は温暖化の進行を抑える役割を持っていることがわかります。しかし、大気中の二酸化炭素がこのまま増え続けるとどうなるのでしょうか。

大気中の二酸化炭素が増えてくると、海にとける二酸化炭素も多くなります。海の水はもともとややアルカリ性です。二酸化炭素が水にとけるとその水は酸性になります。つまり、大気中の二酸化炭素がどんどん海にとけていくと、海は酸性化するのです。

海が酸性化すると、困る生き物がいます。たとえば、貝やウニのからは炭酸カルシウムという物質でできています。貝やウニがからを作るには、海水の中に含まれている炭酸とカルシウムが必要なのですが、二酸化炭素がどんどん海にとけこむと海水の炭酸が減ってしまい、貝やウニはからを作れなくなります。

これと同じことが、サンゴにもいえます。サンゴの土台は炭酸カルシウムでできていますが、二酸化炭素がたくさんとけた海水だと炭酸カルシウムができにくくなります。サンゴ礁は、多くの魚が集まってくるなど、海の生き物にとっても大切な場所です。サンゴがなくなると、これらの生き物たちは生きていく場を失ってしまいます。


episode 4
海が酸性化し、生き物が住みにくくなる。



くわしいデータと解説1
なぜ、二酸化炭素が増えると炭酸が減るのか。


なぜ、海水中にとける二酸化炭素が増えていくと、炭酸が減るのか。この説明は、ちょっと難しいので、興味のある人だけご覧ください。そのカラクリは、次の通りです。

1. 二酸化炭素は水にとけると、水の分子と結びついて、水素イオンと炭酸水素イオンに分かれます。


2. これによって、水の中の水素イオンが増えます。この水素イオンと炭酸イオンが結びついて炭酸水素イオンがつくられます。つまり、ここで炭酸イオンが使われて、減ります。


3. 炭酸イオンが減ると、カルシウムイオンと結びついて炭酸カルシウムをつくることができにくくなります。これが、貝やウニのからができにくくなるカラクリです。


出典:東京大学 海洋アライアンスホームページ
https://www.oa.u-tokyo.ac.jp/enjoy-story/010.html


くわしいデータと解説2
海の二酸化炭素の濃度が上がっている。


出典:気象庁ホームページ
https://www.data.jma.go.jp/gmd/kaiyou/shindan/sougou/html_vol2/sum_1_4_1_vol2.html

上のグラフは、日本列島から南に下った太平洋上(東経137度、北緯7~33度の範囲;下図の赤線)の大気中と表面海水中の冬季の二酸化炭素濃度です。これをみると、大気中の二酸化炭素の濃度が年々上昇するのに合わせて海水中の二酸化炭素の濃度も上がっているのがわかります。これは、大気中の二酸化炭素をこの海の表面海水が吸収していることを表しています。